| 21世紀最初の米国医学図書館協会の年次総会は、5月25〜30日の期間でフロリダ州のオーランドで開催されました。ディズニーワールドの真っ只中にあるドルフィンホテルが会場だったこともあり、楽しそうな家族連れや新婚カップルで賑わっていましたが、私たちは研究発表のセッションや継続教育コースに参加し、ポスター発表や企業展示を見て回りました。 ここ数年の傾向として、米国国立医学図書館(National Library of Medicine : NLM)の活動が目をみはるほど激しく、NLMの発表や展示ブースにはたくさんの参加者が最新情報を求めて集まります。今回の例では、NLMのスタッフは集まった人々に向かって、「今度PubMedのアドレスが簡単になります・これは今日発表したばかりなので、まだあまり大勢の人は知らない情報ですよ」などと言うわけです。（この6月からPubMedは、これまでのhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/のほかにhttp://pubmed.govでもアクセスできるようになりました） そんなNLMの活動の中で、面白いものを一つご紹介します。NLMが1998年から始めた、「科学のプロフィール(Profiles in Science)」というプロジェクトで、20世紀のアメリカの生物医学における代表的な科学者の業績を紹介するサービスです。しかし、単なる業績の紹介文やリストに留まらず、テーマ毎の多くの写真や文書、非公開のメモ、スケッチ、中にはインタビュー画像といったものまでが体系的にまとめられています。 これまでに書きの6人のプロフィールが作成されていて、一番最近のものはこの5月に公開された、ノーベル医学・生理学賞受賞者のMarshall Nirenbergのものです。 Oswald T. Avery (1877 - 1955) 草創の代表的分子生物学研究者の一人。 Joshua Lederberg (1925 - ) 遺伝学・微生物学者。1958年ノーベル賞受賞。 Martin Rodbell (1925 - 1998) 生化学・分子内分泌学者。1994年ノーベル賞受賞。 Julius Axelrod (1912 - ) 薬理学・神経学者。1970年ノーベル賞受賞。 Christian B. Anfinsen (1916 −1995) 生化学者。1972年ノーベル賞受賞。 Marshall Nirenberg (1927 - ) 生化学者。1968年ノーベル賞受賞。 「科学のプロフィール」プロジェクトは、NLMの長期計画の中の「歴史的資料へのアクセスの強化と保存(Enhancing and Preserving Access to Retrospective and Historical Materials)」というプログラムに則って進められています。その計画は、単にNLM独自のコレクションの組織化と電子化に留まらず、他の組織が所有する重要な歴史的資料の組織化を国家的に進めようとするものです。NLMというと、PubMedやClinicalTrials.govなどのように、新しい情報に関するサービスばかりが目立ちますが、このような歴史的資料に関するサービスのあり方についても模索しているのです。 NLMの「科学のプロフィール」プロジェクトはまだ始まったばかりですが、多くの貴重な歴史的資料を有する当センター史料室にとっても、今後のサービスのあり方に大いに参考になると思われます。 「科学のプロフィール」はhttp://profiles.nlm.nih.gov/で見ることができます。 |